秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
「杉原?」

振り返ると橋本くんが数人の男の子達と一緒にいた。

「橋本くん?」

「どうした?待ち合わせ?」

「うん。」

「でももう始まったぞ。何時に来るの?」

「……。」

「俺ここで話し相手してやるよ。」

「いいよ。悪いから。みんなと行って。」

「ここからでも見えるし少しくらい平気。」

「でも……。」

私は橋本くんとこの場にいてはいけないと思った。 
雅臣さんが来たらバレてしまう。

「大丈夫だってば。もうすぐ来るから。」

「そうか?じゃ、またな。」

橋本くんはそのまま友達とひとごみの中にのまれていった。

良かった。
鉢合わせすることなくて。

でもどうしよう。
ここからでも花火は見えるから見ながら待とうかな。

誰も1人で花火を見ている人なんていない。
1人でいる人もいない。
寂しいな。

19時半。
もう一度かけてみると6コールがなったところで雅臣さんが出た。

『真帆、ごめん。まだ仕事が終わらないんだ。また連絡する。ごめん。』

そう言って電話を切ろうとしたところで、後ろから声が聞こえてきた。

『雅臣…早く来て。』

仕事とは思えない甘い声だった。
慌てて電話は切られたがどう考えても情事の最中…。
仕事で名前の呼び捨てもないでしょう。

どういうこと?

つい先週話し合ったばかりだよね。

二股なの?

信じていいんじゃないの?

何で毎週こんなに悩ませられるの?

一喜一憂する自分に疲れてきた。

信じたい気持ちがある。
けど…早く来てって。あの甘い声は何?
仕事なの?雅臣って呼ばれてるのに?

つけてもらった自信が脆くも崩れ始めた。
信頼がまた揺らぎ始めてきた。

何で私こんなところに2時間以上立ち尽くしてるんだろう。

涙が溢れてきた。
浴衣まで来て張り切ってきちゃった。
馬鹿みたい。
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