秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
「杉原?」

「……。」

泣いてるところを見られたくなくて私は俯いた。
巾着からハンカチを出そうとすると、橋本くんの首にかかっていたタオルで顔を隠された。

「こっち。」

私は肩を抱かれ、改札から離れた人の少ない方へ連れて行かれた。

「ご、ごめん…。」

「何言ってるんだ。気になって様子見に来たんだ。彼はこれないのか?」

「うん。来ないと思う。馬鹿みたい。こんな浴衣来て。」

「そんなことない。俺は見れて嬉しい。可愛いよ。よく似合ってる。」

雅臣さんに言って欲しかった言葉を橋本くんが言ってくれる。
私の目からは涙が溢れて止まらない。
橋本くんはタオルで拭いてくれる。

「汗臭かったらごめんな。」

「大丈夫…あ、ありがとう…。」

私の止まることない涙を拭き続ける橋本くん。
私はまたふらっと立ちくらみがしてきた。

「おい、大丈夫か?」

「ちょっと座りたい…。」

橋本くんに抱えられ近くの生垣に座った。
どこもベンチは空いていなかった。

「何か飲み物買ってくるから待ってろ。」

走って目の前にあるコンビニに向かった。
私は気分が悪くうなだれるように座っていた。

「おい!これ早く飲んで。」

スポーツドリンクとレモンウォーターを見せられた。
レモンウォーターを受け取るが力が入らない。
見かねた橋本くんがキャップを外してくれる。

ボトルを持つ手を支えられ、どうにか飲むと少し落ち着いてきた。

「橋本くん。ごめんね。迷惑かけて。もう戻って。花火に来たのに邪魔してごめんね。私も少ししたら帰るから。」

「バカ。放っておける訳ないだろ。帰れるのか?」

「今は無理そう。もう少ししたら…立ち上がれるかな。」

「だろ?こんなところで1人なんて危ない。俺がついてる。ほら、塩飴もたべろ。」

「ありがとう。ごめんね。」

「何度も謝るな。」

「ありがとう。」

「お礼も聞き飽きた。」

「えっと…なんて言ったらいいのかな?」

「何も言わなくていい。ただ、杉原の涙が止まって良かったよ。」

2時間も立ち尽くし、その上泣いたから体調を崩したのだろう。
水分を取り少し良くなったと思う。
立ち上がろうとするとまた立ちくらみがした。

「おい、大丈夫か?」

「う…ん。あんまり大丈夫じゃなさそう。立ちくらみが酷いの。クラクラする。」

「なぁ、タクシーで帰ろう。浴衣が締め付けてるせいもあるだろ。」

「うん。家か…。」

「おい。大丈夫か?」

「うん。大丈夫、かな…。」

私は立ちくらみに目眩までしてきた。
橋本くんと話している感覚はあるけどもう立っていられない。
また座り込んでしまう。

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