秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
見かねた橋本くんはタクシーをアプリで呼んでくれた。

私を抱えるようにタクシーに乗せてくれ、膝枕の上に寝かせてくれた。

「幡ヶ谷までお願いします。」

タクシーは走りだした。
私は気分が悪く、橋本くんの膝で目を閉じていた。

「この先信号を左にある結城クリニックまでお願いします。」

「はい。」

到着すると私をまた抱え込むようにタクシーから下ろした。
夜なのに、と思っていたらドアが開いた。

「ごめん、姉貴。お願い。」

「早くこっちに。」

私は2人に支えられクリニックの中へ入る。
ベッドに横にならせてもらうと問診が始まる。

「辛いところをおしえてね。今話せるかな?」

「はい。立ちくらみと目眩、吐き気がします。横になるといいのですが立ち上がると始まります。今は頭痛もあります。」

「熱中症は間違いなくあるけど他にも何かありそうかな。ひとまず採血して、そのまま点滴を始めるね。着替えできそう?」

「今は動きたくなくて…ごめんなさい。」

「いいのよ。あなたが大丈夫なら。健吾、部屋から出て。」

「え?」

「浴衣を緩めるから。」

「あ、あぁ。ごめん。」

お姉さんは帯を外し、紐を緩めてくれた。

「はぁ…楽になりました。ありがとうございます。こんな時間にご迷惑おかけしてすみません。」

「いいのよ。焦った健吾からの電話で驚いたけどこんな可愛い子連れてくるんだもん。」

「えっと…私は会社の同僚なんです。」

「あら残念。」

「すみません。」

「いいのよ。さて、点滴の準備するけど健吾は入っていい?」

「はい。」

お姉さんと入れ替わるように橋本くんが入ってきた。

「ありがとう、連れてきてくれて。」

「横になったからさっきより顔色いいよ。さっきは真っ青だったから。」

「ごめんね。」

「いいから。」

お姉さんが戻ってきてくれ、採血と点滴をしてくれた。
するとひょっこり女の子が出てきた。

「優奈、入ってきちゃダメよ。」

「えーっ。健吾にいちゃんきてるってパパ言ってたから。」

「健吾は遊びできてるんじゃないのよ。お友達が具合悪いのよ。」

「遊べないの?」

「ダメよ。ほら、お友達にもご挨拶して上に戻って。」

「優奈です。」

「こんばんは。ごめんね、こんな時間に来て。」

「早く良くなってください。」

「ありがとう。」

「健吾にいちゃん、また来てね。」

「優奈、またな。」
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