秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
昨日お邪魔したお姉さんのクリニックまで20分ちょっと、橋本くんは絶えず話をしてくれ、終始私を和ませてくれた。
お陰で私は気持ちが明るくなった。

クリニックのドアは閉まっており、ブラインドも下りていたが横の玄関をピンポンするとお姉さんが出てきてくれた。

「杉原さん、待ってたわ。体調はどう?」

「昨日は本当にお世話になりました。洋服もまだお借りしたままですみません。」

「いいのよ。健吾の職場の人なんでしょ?健吾がお世話になってありがとうね。」

「こちらこそお世話になってるんです。」

「さ、また横になりましょう。めまいはどう?」

「めまいはだいぶ楽になりました。立ちくらみはあります。食欲はわかないです。見るとムカムカするし。」

「めまい症かな。疲れてるのかしら。」

「夏休み明け忙しかったので…。」

「健吾。優奈のところに顔出してきて。」

「はいよ。」

ドアがバタンと閉まるとお姉さんはベッドの脇の椅子に腰掛けた。

「杉原さん、何なら食べられるの?匂いがダメ?見るとムカムカするの?めまいはグルグルしないのよね?」

「今日オレンジのゼリーはさっぱりしてたので食べられました。レモンティーも飲めました。でもご飯は食べたくなくて。さっきテレビのラーメン特集を見て食べたいと思ったけど実際は食べれなさそうです。」

「ねぇ。生理はいつが最後?」

「え?」

「めまい症とかよりも妊娠によるホルモンバランスの崩れかな?なんて。悪阻とかなんじゃ…って。」

「……。そんな。」

「生理、きてないんじゃない?」

「7月の最後の方で生理がありました。今月はまだ…。」

「可能性はあるのかしら?」

「…あります…。」

「なら調べてみる?尿検査ならすぐに分かるわ。とはいえうちは婦人科じゃないから市販の検査キットだけど。でも話を聞いているとなんだか気になるのよ。」

「ど、どうしよう。」

「まだ確定じゃないわ。少し待っててくれる?近くのドラッグストアで買ってくるわ。」

そういうとお姉さんは出て行ってしまった。

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