秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
私たちはなんとなくお互いのフレームを選んであげた形になった。
私にはそれがこそばゆかった。

メガネが出来上がるまで近くのインテリア雑貨をぶらぶらした。

私は以前から狙っていたキャンドルホルダーを買った。
夏でもさっぱりした香りのキャンドルをつけ、ボーッとビールを飲んだりすると頭の疲れが取れる気がする。
今日は水の上に浮かせ水面を楽しめるタイプを購入した。

「杉原は癒し系グッズが好きなんだな。」

「そうかも、です。恥ずかしながら癒しがこういうものでしかなくて。」

「いいんじゃないか?よくお風呂で使うとか聞くけど…。」

「お風呂もいいですけどうちは狭いから足も伸ばせないしくつろげないのでやらないですね。」

「そうか。たしかに寛ぐためのものだからジャグジー付きみたいなところでやりたいよな。」

「理想ですね。」

「課長の癒しはなんですか?」

「なぁ、課長はやめないか?仕事の延長みたいでさっきから居心地が悪い。」

「すみません。じゃ、田中さん?」

「名前にしてくれ。」

「えぇ!無理です。」

「酷いな。俺は色々迷惑かけられて…。」

「もう!分かりました。呼びます!呼ばせてください。ま、ま、ま、ま、雅臣さん。」

「プフ。よろしくな。真帆。」

ボッと顔が真っ赤になるのが分かった。
火がついたように顔が熱くなる。

「さて、そろそろメガネができたかな?」

雅臣さんは1歩先を進んで眼鏡店へ戻っていく。
私も背中を見ながらついて行った。
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