秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
私たちは話が途切れることなく喋り続け、食べ飲みし続けた。

明日もあるし、とお店を出たのは夜9時。

「あー美味しかった。教えてくれてありがとね!久しぶりにこんなに笑ったよ。ありがとね!」

「こちらこそ。久しぶりにご飯に行けて良かったよ。笑いすぎて頬痛いわ。」

私と橋本くんは反対方向のため改札で分かれた。

電車を待ちながらふとスマホを手にするとメールの着信を知らせるランプが付いていた。

見ると雅臣さんからのものが3件入っていた。

『こちらこそ付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ。キャンドルいい感じだな。』

『車の中にクマのキーホルダーが落ちていた。真帆以外車に乗せた覚えがないから君のだと思うのだが。』

『おはよう。今日の夜少し時間あるか?』

土曜の夜から今日の朝まで3件来てたのに全く気が付かなかった。しかもメールのため相手には未読か既読かわからない。無視したみたいになってしまうでないか。
慌ててメールを開き返信した。

『おつかれさまです。大変申し訳ありません。メールをずっと見ておらず、今気が付きました。今日の夜とのことですが何かありましたでしょうか?』

送信すると、すぐに電話がかかってきた。

『今家か?』

『まだ駅です。』

『遅いな。残業か?』

『いえ。橋本くんとご飯に行ってました。』

『……そうか。』

『お急ぎでしたか?すみませんでした。メールに気がつかなくて。』

『いや、大したことじゃなかったから大丈夫だ。まだ代々木なのか?』

『はい。駅です。』

『気をつけて帰れよ。』

『はい。』

用事はなんだったんだろう。
でも大したことじゃなくて良かった。
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