秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
「ごめん。なんか引き離しちゃって悪かったな。」

「うぅ…いいんです。いつものことなので…。最近会う回数が少ないから余計に泣きたくなるけど大丈夫ですから。」

「すまん。」

「本当に大丈夫ですから…。でも、こちらこそ申し訳ありませんでした。よく覚えてないのですがお誘いしてしまったみたいで。すみません。」

「いや、飲み会の席での話だから。でもそうなったら楽しいな、と思ったからさ。俺の夏休みはつまらなさそうだから真帆が買い物に連れて行ってあげる、だなんて言うから期待したのもある。」

「課長にそんな大それたことを言うなんて申し訳ありません。」

「真帆。この前プライベートな時は名前で呼んでって言ったよね?俺は真帆って呼んでるのに真帆はまた課長って呼んでる。外で課長って言われると若い子たぶらかしてるみたいだからやめてよ。」

「そんな風には見えません。ましてや私ですから…。部下にしか見えないですよ。」

「部下にしか見えない…か。歳の差か?」

「いえ。顔面偏差値の差です。シラフなんですから傷つくこと言わせないでください。」

「この前も真帆は顔の話してたな。そんなに俺の顔苦手か?」

「苦手…ではなく恐れ多い?感じです。横にいて申し訳ないと言うか。」

「慣れてくれないか?」

「仕事の時は大丈夫ですから。」

「プライベートでも。」

「……。」

「お腹空いてる?」

「まだ。あんまり…。」

「じゃ、ドライブしよう。ベイブリッジにでも行こうか。」

「ドライブ!?」

「あぁ。気分転換にどう?車は苦手?」

「いえ。大丈夫ですが…。」

「なら良かった。」
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