秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
トイレから戻るとすでに時計屋の外に立っていた。

「あれ?もう終わったんですか?」

「あぁ。インスピレーションで気に入ったのがあったから決めたんだ。」

「即決派なんですね。」

「割とそうなのかもしれない。」

「でもいいのが見つかって良かったですね。」

「そうだな。後で見せるな。」

「はい!」

また雅臣さんに手を握られるがだいぶ慣れてきたように思う。うっかりすると自分から握ってしまいそうなほどに慣らされてしまった。
また片手は荷物が沢山だが軽々と持つその大きくて、少し骨張ったしっかりとした手。
私もこの手に繋がれているだけでとても安心する。

「疲れただろう。お茶でもするか?」

「そうですね。雅臣さんも運転するのに沢山付き合わされて疲れたでしょう。」

「いや、疲れてない。楽しくて仕方ない。真帆の服をもっと選びたかったなぁ。お茶したらまた見に行こうか。」

「もう十分です。破産しちゃいます。」

「真帆は堅実だな。」

「雅臣さんは浪費家なんですか?」

「俺は堅実かな。ただ、買う時は額が大きいと思う。長く使えるものを買いたいから。でもその結果、弟にはいつも同じものばかりでくそダサいと言われるがな。」

「長く使うことは大事ですよ。でもその弟さんの言い方は笑っちゃいます。ごめんなさい。」

「いや、無頓着な俺も悪いんだ。」

「ふふふ。でもなんでも長く大切にすることは良いことですよ。間違ってはいないです。」

「ありがとう。お腹はどう?空いてる?」

「お昼がゆっくりだったからまだそんなには…。」

「じゃ、カフェでお茶をしてから帰ろうか。家の方で夕飯にしよう。」

「そうですね。」
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