秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない
部屋も片付き、雅臣さんはキッチンに立った。

冷蔵庫を見られ、これもまた恥ずかしい。
やっぱり私が作れば良かった〜。
生活を見られるって本当に恥ずかしい。

「雅臣さん。やっぱり私が作ります。座っててください。」

「え?別に俺が作るよ。真帆は座っていいよ。俺が誘ったんだし。真帆の家の材料なのは申し訳ないけどさ。」

「いえ、材料のこととかは全然いいんです。でも冷蔵庫の中とか見られて恥ずかしいなって…。」

「そういうもの?ごめん。なら一緒にやろう。」

「え…あ…あぁ。そうですね。じゃ、指示してください。」

「なんか仕事みたいだな。」

「ほんと…。」

「だから…仕事は忘れてただの…男だと思ってくれたら…。」

「……。」

「な、その…まぁ…普通にしてくれよ。」

「そ、そうですね。仕事みたいじゃ気も休まらないですよね。ハハ…」

「ナポリタンとスープかサラダにしようかと思うんだが。」

「いいですね!ウインナーはないのでベーコンでもいいですか?サンドウィッチの残りでレタスとかもあるからサラダは作れそうです。」

「じゃ、パスタを作るから材料出してもらえるか?」

私たちは狭いキッチンで並んで支度を始めた。
昔付き合っていた彼氏はキッチンに立つことなんてなかった。片付けもしてくれたことなんてなかったと思う。私もその頃はそれでいいと思っていた。彼のためにやりたいと思っていた。
でもこうして2人でキッチンに立つと狭くてぶつかり合いながら、手が絡み合うかのように作る料理は楽しくて幸せな気持ちになるって初めて知った。
豪華な料理でなくていい、どんな物だとしても2人で楽しくできたら美味しくなるはず。

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