秘密の秘密は秘密じゃないのかもしれない

告白

「真帆、これ…。」

雅臣さんがカバンの中から小箱を出してきた。

「真帆、受け取って欲しい。一緒の時を刻んでいきたい。付き合って欲しい。」

雅臣さんは小箱を私に差し出してきた。

私は受け取り、中を見ると腕時計が入っていた。
さっきお店で見たシルバーで文字盤がピンクゴールドの可愛いと思った時計だった。

雅臣さんを見上げると、
「俺とペアなんだ。真帆と一緒に時を刻みたい。」

「雅臣さん…どうして私なんですか?私は特にこれといって何かに秀でる女ではありません。雅臣さんに選んでもらえる理由がわからないんです。自信がないんです。雅臣さんはなんでも持ってる人です。見た目も性格も良くて、仕事もできて誰からも選ばれる人です。でも私は反対に何もないんです。だから…私は雅臣さんの隣に並ぶことは出来ません。」

「真帆は何もなくない。真帆は可愛い。みんなの仕事をよく見ていて、周りのサポートが上手だ。1から10まで言わなくてもわかってくれるし、気遣いが素晴らしい。何より真帆といて気持ちが和らぐんだ。話していても楽しいんだ。ずっとそばにいたいと思うんだ。真帆は俺がなんでも持ってると言うけれどそんなことはない。真帆といると満たされた気持ちになるんだ。だからそばにいて欲しい。」

「雅臣さん…。」

「真帆。俺は真帆が好きだ。真帆を大事にしたい。真帆のそばにいたい。恥ずかしいが今までこんな気持ちになったことがないんだ。真帆に振り向いて欲しくて焦ってる。」

「そんな…。」

「真帆は俺じゃダメか?仕事ではない俺を見て欲しい。」

「本気ですか?本気で私と…付き合うんですか?」

「ここまでいっても本気と思ってもらえないか?」

「そう言うわけじゃないんです。雅臣さんがいつか離れていっちゃうんじゃないかと思うと踏み出せないんです。裏切られるくらいなら踏み出したくない。弱い人間なんです。」

「俺が守るよ。それに真帆のそばにいると誓うよ。」

私は涙が流れ出てきて止まらなくなった。
声にならず、時計を握りながら頷くと雅臣さんに抱きしめられた。

「ありがとう。絶対に大切にするから。だから真帆はいつも俺のここにいて。」

うん、うん…
何度も胸の中で頷く。

「私も雅臣さんが好き。」
やっと、小さな声が漏れる。
雅臣さんに聞こえてないかもしれない。
でも自分の声で言いたかった。伝えたかった。

でもその声を雅臣さんは拾ってくれ、更に強く抱きしめられた。

私の涙が落ち着いてきた頃ようやく雅臣さんの腕は緩んだ。
そして目が合い、雅臣さんの顔が近づいてきた。
私も自然と目を閉じるとすぐに柔らかいものが私の唇に触れてきた。

雅臣さんのキスは優しく、ふんわりと重なるようなものだったが次第に形を変え、私の形を確認するように徐々に深くなっていった。
私も雅臣さんを求めるようにシャツをぎゅっと握りしめ没頭した。
テレビの音が遠くのように聞こえてくるが今は私たちの出す水音の方が大きく感じる。
しばらくするとゆっくりと雅臣さんが離れていった。

「ごめん。我慢できなかった。今日はこれ以上いたらもっと我慢できなくなるから帰るな。」

私の額にチュッとキスを落とすと立ち上がる。

私はギュッと雅臣さんのシャツを握りしめた。

「真帆?」

「離れがたいんです……。」

「真帆?俺もだよ。もう少しそばにいてもいいのか?」

私は無言で頷いた。
私も雅臣さんも大人だ。
これがどう言うことかわかってる。
今付き合うって決めて、すぐにこういうことってどうなんだろう。
でも私の本能が「離れたくない」って言ってる。
素直になりたい…。
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