社長じゃなくて、君の夫になってもいいですか? 〜社長、嫌いになってもいいですか?シリーズ 第2章〜
第1印象は「緊張しすぎる人」。

大学生の面接とは思えない程、カチカチに固めてきた髪の毛にアイロンをかけたスーツ。
自分がかつて就活生だった時代を思い出す容貌だった。

面接は、今まで感じたことがない程の緊張感に包まれていた。
その空気を作り出した雨音は、僕が出したコーヒーに一切手をつけることなく、手は膝に置いたまま。

「大学は、どこの学部?」
「はい。商学部に入りました」
「それはどうして?」
「はい。これから先、IT社会が本格化していく中で、マーケティングの知識が生きていくのに必要になると考えたからです」

まるで、就活のマニュアルのような回答。
必死に読み込んで覚えてきたのだろう。
一言一句間違えないように、とゆっくり丁寧に、でもスラスラと文言を発している。

その回答が、あまりにも完璧すぎた。
受け答えするときの声も、顔も変わらない。
相当訓練したのだろう、と思った。
本当の彼女が見えない、と思った。

僕は、少し意地悪をしたくなった。
本当の彼女が見たくなった。
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