愛は愛より愛し

分かっているとも。そんなことは。

「強制なんで」
「途中でテキトーに抜ければ? 何なら僕が迎えに行くよ」
「いや、う、んー……検討、しておく」

妹たちからその言葉を何度か訊いたが、学生たちの手を借りるには、という姉の意地が。

その点、世名はちょっと変な人間だが、借りれる手を持っている。

それは、無かった選択肢が広がる、ということ。

私の言葉に笑った世名が立ち止まる。
いつの間にか弊社ビルの正面玄関前。

「今日はありがとう。じゃあまた」
「こちらこそ、じゃあ」

また、と言いかけて止まる。見ればひらひらと涼しげに手を振る姿。

渋々私もそれに振り返した。

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