愛は愛より愛し

立ったままそれを飲んでいると、くるりと霙が振り向く。

「コーヒー、座って飲んで」
「はーい」

言われると思った。返答して椅子に座る。

「あたしは嫌になったら家事も全部投げ出すし、好きなときに出てくし」
「そう、それは失礼」

霙はシュークリームを持って立ち上がった。
こちらに近づいて、続ける。

「それに、お姉ちゃんはあたしだけのお姉ちゃんだから。お嫁に行くまで面倒みてあげる」

妖艶に笑む妹に、私は呆けた。

「お風呂お先ー」

リビングを出て風呂場へ向かう。

霙だけの姉。
それは確かに、間違ってはいない。

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