愛は愛より愛し
「閑野、ご飯食べた?」
「まだ。買いに行く気がおきない」
「コンビニ? 一緒に行こうぜーい」
同期、菱元が日傘を振った。
それを見て、私は漸く立ち上がる気になった。
スマホをポケットに入れて、先に歩き始めた菱元を追う。
「午前は内だったの?」
「そう、午後から外。車で良かった」
「暑いもんね」
「温暖化進みすぎてる」
エレベーターを地上階でおりて、エントランスを抜けた。
ばさ、と菱元が開いた日傘の中へするりと収まる。移動式の日影だ。素晴らしい。
私は菱元に感謝しながら横断歩道の信号が変わるのを待った。