愛は愛より愛し

「石堂世名と言います。改めて、あの時はありがとうございました」

名刺を渡され、片手は蕎麦で塞がっていたので反対の手で受け取った。

「あ、どうも」

内勤の私は殆ど名刺なんて持ち歩かないので、普通にデスクの中だ。

セナだ。しかも名前か。
見るとやはり営業職らしい。私の推理は間違っていなかった。

「すみません、名刺なくて」

というかまさか会うとも思わなくて。

「いえ、全然。良かったらお礼に食事でもどうですか」
「え、食事?」
「助けてくださった、お礼に」

にこやかに言われる。私も笑顔を作り返しながら蕎麦を見せた。

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