愛は愛より愛し
助けたお礼って食事をするほどのこともしていない。
「蕎麦があるので」
「蕎麦がお好きなんですか?」
「ん、まあ、そうですね」
「じゃあ美味しい蕎麦の店を探しておきます。あ、これ僕の番号です」
名刺の裏を捲られ、そこに書いてある企業名の下に手書きの番号。
よく分からないけれど、女慣れしているのはこの数分で分かった。
「いやあの、すみません。結構です」
失礼は承知の上で私は名刺を返す。驚いたようにブルーグレーの眼がぱちくりと瞬いた。
見返りとか下心。私の変な潔癖症が男のできない原因だというのは真実だ。