愛は愛より愛し

菱元が「へえ」と頷きながら言う。
丁度、世名が会計を終えて戻ってきた。

「シズノさん、どうぞ」
「どうも、ありがとうございます」
「じゃあ僕行きます」

涼し気な笑顔を見せて店内を出ていく。
私と菱元はそれを見送った。

「え、パシリ? 金づる? メッシー?」
「なんか助けたお礼に昼ごはん買ってくれるって」
「へー律儀な」

言われてみれば確かに律儀なのか。

名刺の裏に番号を書くところがなければな……いや無かったところで、何かに繋がるわけもない。

菱元の日傘に入れてもらい、弊社ビルに帰る。ラウンジで買ってもらったものを広げると、コーヒーが二本入っていた。

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