愛は愛より愛し
天然、なのか。
それとも計算なのか。
『癖で入れてしまいました。ご迷惑をかけてすみません』
「いえ、それは別に。会社の受付にでも届けて……」
「『あ、シズノさん!!』」
スマホから聞こえる声と、反対の耳から聞こえる声がリンクして、微妙にずれた。
大きな声にすれ違う人の視線が後ろへ。私も同じように振り向いてそちらを見た。
少し距離のある向こうに世名がいた。
「うわ」
まさか現れるとは思わず、声が漏れる。
その声はまだ切れていないスマホから聴こえたらしく、世名はケラケラと笑った。
「一日に二回会えるなんて。いや、三回目なので運命ですね」