愛は愛より愛し

何を寒いことを、と私は通話を切った。

「これどうぞ」

そして全てをスルーして黒い端末を渡す。世名は受け取り、にこりと笑った。

「ありがとうございます。今帰りですか?」
「はい。帰ります」
「えー僕も帰りたいです、今から鞄取ってこようかな」
「お仕事中なのでは?」
「仕事中ですし、まだ終われません」

腕を組んで眉を顰める顔に、少しだけ親近感を覚える。というか、あれか、こんなに綺麗な顔でも残業はするのか。

営業って大変だな、と熟思う。菱元も定時で帰っているのはあまり見ない。

「これ、頂いたものですけど」

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