愛は愛より愛し
ヒールのあるパンプスが、カツ、と地面を叩く音。
そして反対の足が何かをぐに、と踏んだ。
その感触の方に驚き、足元を見る。
私の安物パンプスが、綺麗に磨かれた世名の革靴を踏んでいる。
「す、すみま」
「やっぱり」
「へ?」
「結婚したいです。結婚しませんか。結婚しましょう」
退こうとするも、世名の手が離れず、私は足を浮かせただけ。革靴にくっきりと擦った跡が残っている。
待って。今なんて言った……?
言葉を思い出す。何かの三段活用みたいな言葉を。
「どうですか?」
世名は期待の籠もった視線をこちらに向けていた。