愛は愛より愛し

神様、と思った。

いや、私の神様はもうずっと前に川に沈んで死んだのだけれど。
私のじゃなくても、違う神様でも良いけれど。

神様、これが運命だというなら。

「私、好きな人がいるので」

絶句という表情。

「結婚はできません、さよなら」

神様、私は一生誰かと幸せになって生きる道なんて要りません。

手を取り返し、すたこらさっさと駅の方へ早足で行く。後ろから足音がしないことを願いつつ。




家に帰り、玄関先に座り込む。
夏の湿気と暑さの理由でなく、冷や汗がどっと出てきた。

恭子がバイトなので、チェーンはかけずに鍵だけをかける。

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