愛は愛より愛し

「どうしたの? 汗すごいよ」

おかえり、と言われるより先に霙がぎょっとした顔をこちらに向けた。

「……白馬の王子って、今どこで何してると思う?」

馬鹿みたいな質問をしてしまった。
テーブルに出された麦茶をグラスに注いで霙が差し出してくれる。

「急にどうしたの」
「もう会えないのかな……」
「お姉ちゃん?」

ごくごくとそれを飲み干すと、水分が補給されたからか、涙が溢れ出てきた。

知ってる。神様なんていない。
運命なんてない。

そんなものを、私はあの日、全部一緒に川の底に沈めた。

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