愛は愛より愛し
理由を愛す
次いで、「ちょっと来てー!」と聞こえたので、二人で顔を見合わせて立ち上がる。
今日はバイトだったはず。誰かと飲んで酔っているのだろうか。
霙も同じような推測を並べていたと思う。
リビングを出た廊下で、玄関先にいる姿を見るまでは。
私はその姿を見て、足を止める。
霙は立ち止まった私を追い越して恭子のいる玄関へ行った。
「何したの、そんな血だらけで」
「歩道橋のとこで転んじゃってさー」
膝頭から血が出ている。両膝から。
「この人が肩貸してくれた」
「そうなんですか。すみません、わざわざ」
世名がいた。