愛は愛より愛し

「いえ、じゃあ私は行きま……」

霙の言葉に少し笑んで世名が顔を上げた。
私の視線とばっちり絡む。

私はただそこに佇むことしか出来なかった。

靴を脱いだ恭子の肩を支えようとしていた霙が、固まった世名と、動かない私の両方に気付いた。

「お姉ちゃんの、お知り合い……?」

私に尋ねた霙の方を一度見て、何と答えるのが正解なのか考える。

「そうです」

それより先に、世名が答えた。はっきりと。

空気がピリピリとした。霙は何かに気付いたように、私は気付かれないように、きっと世名は気付いて欲しいように。

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