愛は愛より愛し
生贄として妹に差し出される私。
まあそれは仕方ない、と私も立ち上がった。
霙の視線が向いたので「送ってくるね」と玄関を指す。
「うん……気をつけて」
世名と玄関を出て、鍵をかける。
「さっきはすみません」
背中にかけられた言葉に振り向いた。世名がしょぼんとした顔で、足元を見ている。
「急に結婚とか言って」
「それが急って分かる人なんですね」
「一般常識は一応あるんですよこれでも」
「冗談です。恭子を見捨てずに来てくれたのを見れば、善人だというのは分かります」
歩き出した。世名が後をついてくる。