愛は愛より愛し

視点を手元に戻す。その途中で何かが視界に入る。何か、とは。

ブルーグレーの瞳。
茶色い髪。

きょとんとこちらを見る整った顔が、途端に明るくなった。

「世名」

思った言葉がそのまま口に出ていた。
うわ、じゃなくて良かった、とも言い難い。

「……さん」

間を空けてつけた敬称に、世名が笑った。

「名前覚えてくれてたんですね、嬉しいです。こんばんは」
「……こんばんは」

前半をスルーして挨拶をすると、世名は楽しそうに笑っている。何時も楽しそうで羨ましいことですよ。

私は煙を吐いて、吸う。

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