愛は愛より愛し
「……とりあえず私は帰ります」
「じゃあ僕も行こうっと」
一緒に喫煙所を出た。
なんとなくまた空を見上げてしまって、それから駅の方へ視線を向ける。
世名がふと口を開いた。
「閑野さんの好きな人って」
声の方へ目をやる。世名がじっとこちらを見ていた。
「好きな人ってことは彼氏じゃないんだよね? 職場のひと? それとも学生の時の知り合い?」
目をぱちくり。純粋な疑問なのか。
しかしそれに返答する義理はあるのか。
「高校のとき、私を助けて親切にしてくれた人です」
そんな途方もない問題を考えるのを止めてしまった。