愛は愛より愛し

飛行機をおりて宛もなく彷徨い歩いて、ロンドン橋の上で私は怒鳴り散らしていた。

そこに日本語で話しかけてきたひと。

今考えると私も相手も正気じゃなかったよな、とは思う。

「世名は結婚したいの?」
「いや、それほどは」
「そうなんだ。殆ど初対面の私に結婚しようとか言ってくるから、結婚したい人なんだと思ってました」
「閑野さんだから結婚したかったんだけど」

あっさりと言われ、動きが止まる。

「え、なんで?」
「素敵だと思ったから?」

先ほどと同じように首を傾げて言うので、私も傾げたくなる。

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