愛は愛より愛し

世名がそれに気付いたらしく、私の視線の先を辿った。

「花は要らないかな」
「ハッキリ言う……」
「花束とか貰っても、僕の家花瓶とかないし」
「高くない花瓶なら、まあ」
「本当に何かくれるんですか」

手首をそのままにしておくのが疲れて、紙袋を掴んで提げる。

嬉しそうに尋ねてくるそれが、プレゼントを待つ少年のようで、何か後悔が込み上げた。
期待をさせてしまったのなら。

「何かって、私ができる範囲だから」
「できる。しかもプライスレス」

なんていう殺し文句。しかも売りつける側がそれを言って良いのか。

< 73 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop