愛は愛より愛し
たらればの前提を確認する。世名が視界の端で頷くのが見えた。
「そんなテキトーなことして恭子を泣かせたら、あなたのこと沈めるから」
睨めば、目をパチクリさせ、笑う。
「だよね」
「は?」
「なので恭子さんと付き合うことはありません。悪しからず」
「す、勧めてないし!」
駅まで来て、改札を通る。階段を上り、ホームへ行った。
どこにいるのか分からないけれど、ビルの多いこの辺で鳴く蝉の声に、暑さを感じる。
「ケーキは食べるの?」
誕生日ならでは。閑野家では好きなケーキを選ぶことができる。