愛は愛より愛し
贈り物を愛す

本当に来るのだろうか。

「あ、閑野さん!」

待ち合わせた10メートル程先の場所から声がかかる。
周りのいた人たちも同じようにそちらを振り向いた。

嬉しそうに手を振る世名がこちらを見ている。

「お待たせしました」
「こんにちは。蕎麦で良い? 他のもの食べたい?」
「蕎麦で」

来る、というより居た。

じゃあこっち、と歩き出す世名の後ろをついていく。斜め後ろを歩いていると、世名が振り向いた。

にこにこしている。なんだか、散歩している犬が、振り向いているみたい。

29歳をかなり失礼なものに例えている私に構わず、世名が口を開く。

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