愛は愛より愛し

スマートに会計をする世名の横から金を出すことも出来ず、「ご馳走さまです」と言うのみ。

「これは……何?」

私の御礼の言葉も聞かず、世名は紙袋を凝視する。

「クッキー詰め合わせだけど……苦手だったら会社の人にあげ、」
「家宝にする」
「いや食べて。そういえば、前にあげたコーヒーは飲んだよね?」

恭子が膝を怪我した日だ。あげたというよりは、世名が買ってくれたコーヒーを返したのだが。

同じように「家宝にする」と言っていたのを思い出した。

何も言わず明後日の方を見てにこにこしている。

「早く飲んで」
「しょ、賞味期限まだだから!」

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