イケメン御曹司の甘い魔法
「木下さん、それは俺の部屋で受け取るよ。まずは俺の部屋においでよ。」
藤堂さんは、ロビーで話を終わらせるつもりで、待っていた訳では無いようだ。
私はロビーに藤堂さんが居ると聞いたとき、やはり早く用事をここで済ませたいのだろうと、少し凹んだ気持ちになっていたので驚いた。
藤堂さんは、立ち止まっている私の手を引いて歩き出した。
エレベーターのボタンを押して、私の顔を覗き込みクスッと笑う。
「木下さんは、手をつながないと、どこかに行ってしまいそうだからね?心配でロビーまで迎えに来ちゃったよ。」
藤堂さんは無意識かも知れないが、こんなに甘くされると誤解してしまいそうになる。
「どうぞ、お上がりください。」
先日、お邪魔したばかりの部屋でも、藤堂さんの家だと思うと緊張する。
前回も思ったが、とてもお洒落な部屋だ。
藤堂さんの使っているコロンの香がして少しドキドキする。
リビングに通されると、あらためて私は先ほど差し出した御礼のプレゼントを、藤堂さんの前に出し、ペコリと頭を下げた。
「どうぞ、受け取って頂けませんか?」
藤堂さんは恐縮しながらも、プレゼントを受け取ってくれた。
それだけで嬉しさが込み上げてくる。
好きな人にプレゼントを渡すことが、こんなにも心がホカホカするものかと初めて知った。