イケメン御曹司の甘い魔法
-------カチャ-----
ドアの開く音が聞こえた。
「---木下さん!まだ残業していたの?」
接待の帰りなのか、ネクタイを少し緩めて気だるそうに男性が入って来た。
藤堂 優斗(とうどう ゆうと)27歳
端正な顔立ちのこの男性は、営業成績ナンバーワンで、しかも会社代表の御曹司と華麗なプロフィールだ。
ルックス、実力、お金、全てを兼ね備えている。
女性たちが放っておくはずが無い。
私も入社当時は、他の女子同様に憧れ、例外なく好きになった。
しかし、最近では私には手の届かない存在と現実を知り、好きになる気持ちも封印した。
好きになったら自分が惨めになりそうだからだ。
「木下さん、いつも遅い時間まで仕事しているね…」
「…はい。仕事が遅いのかも知れません。ハハハ…」
作り笑いをしながら、後ろを振り返ると、すぐ横に藤堂さんの顔がある。
(-----------ちっ…近い!-----------)-
驚いて心臓がドクンと音をたてた。
近くで見ると、整った綺麗な顔はすごい破壊力だ。
じっと私のPC画面を見た後に、何故かフーと大きく溜息をついた。
「…なるほどね、そういう事か…」
私は何のことか分からず、ポカンと口が開いた。
酷く間抜けな顔になっていただろう。
「その資料、共有ファイルに入れて。俺も手伝うから…」
「い----いいえ---私の仕事ですから---」
すると、藤堂さんは私の頭を後からポンと叩いた。
訳も分からず、戸惑っていると…
「…これは、他の奴に俺が頼んだ資料なんだよ。もともと俺の資料だから、自分でやれば早いし、このままだと木下さん徹夜になるぞ…」
私が共有ファイルに資料を入れると、藤堂さんは無言でカタカタとキーボードを打ち始めた。
夜のオフィスに、カタカタ---とPCを打ち込む音だけが響き渡った。