イケメン御曹司の甘い魔法
「-----よしっ、終わったぞ!木下さんの方はどう?」
「はい。私も間もなく終了です。」
藤堂さんのお陰で、徹夜を免れた。
思っていたよりもボリュームがある仕事で、私一人だったらどれだけ時間がかかったことか、考えると背筋が寒くなる。
「ねぇ、木下さんは、この時間で終電間に合うの?」
時計を見ると、もうすぐ12時になろうとしている。
もう、家まで帰れる電車は無い。
「…え…ええと…タクシーで帰りますので大丈夫です。」
藤堂さんは顎に手を当てて、何かを考えている。
「明日は土曜で会社休みだし、寝るだけなら俺の部屋に来ればいいか…」
私は何かの聞き間違えをしたようだ。
「----っは?もう一度言ってもらえますか?」
「腹が減ったから何か食べて帰ろうよ。俺の家は徒歩圏内だから今日は泊まって、明日帰ればいいよ!」
藤堂さんは、有無を言わさず私の手を引いて歩き出した。
藤堂さんに手を引かれるなんて、何が起きてしまったのだろう。
会社のすぐ近くに、いつも行列ができているラーメン屋がある。
さすがにこの時間は誰も並んでいない。
「木下さん、ラーメンで良い?」
「…はい。すごく食べたいです。」
このラーメン屋は、すごく気になってはいたものの、いつも行列ができていて諦めていた。
まさか、藤堂さんとこのラーメンを食べられるとは思わなかった。