イケメン御曹司の甘い魔法
「藤堂、差し入れ持って来たぞ…」
どこかで聞いたことのある声だ。
嫌な予感がして振り返る。
「高宮部長、来てくださったのですか。ありがとうございます。」
優斗さんは、高宮部長に丁寧に挨拶した。
営業部の高宮部長が差し入れを持ってきてくれたのだ。
同じ会社の人に会うとは、思わなかった。
なぜ、こんなところまで部長が来るのだろうか…とても気まずい。
何と言って胡麻化したら良いのだろう。考えても思いつかない。
高宮部長がこちらを見ている。
見つかってしまったようだ…
「おや、木下さん、君がここに居るとは驚きだね。」
「ぶ…ぶ…部長、お疲れ様です…」
「木下さん、まさか君、藤堂君と…」
私が高宮部長に何か言おうとした時、優斗さんは私の肩に手を置いて私を止めた。
高宮部長は、口をあんぐり開けて驚いている。
確かに優斗さんと私が一緒に居るのは、不釣り合いで不自然だ。
それは自分でも分かっている。
「高宮部長、会社の皆さんには、まだ秘密なのですが、僕と木下さんは付き合っています。」
部長に向って優斗さんは、隠すことなく堂々と話をしている。
高宮部長は私と優斗さんを交互に見ると、信じられないという顔をした。
優斗さんの気持ちは嬉しいが、部長に言ってしまって大丈夫なのだろうか。
さらに優斗さんは部長に話を続ける。
「今は僕の方が思っているだけなので、片思いなのですが…僕は木下さんと結婚したいと思っています。」
「-----っっえ!優斗さん!」
私は驚いて大きな声を出してしまった。
優斗さんは、どうしてそんなことを言ってしまうのだろうか。