イケメン御曹司の甘い魔法
「木下さん、私は君に何度かお世話になっているよ?いろいろ楽しい話もしてくれたよ。」
「---っは?社長、意味が分からないのですが…」
「私は変装というわけでもないが、声を掛けられるのも面倒なので、早朝に帽子を被ってジャージで会社の回りをウォーキングするのが日課でね…。」
「-----あっ!-----」
私は思わず大きな声を出してしまった。
思い出したのだ。
少し早めに出社するようにしていた私は、何度か会社の回りをウォーキングするお爺さんに会っていた。
汗だくで歩いているので、おしぼりや冷たい水を何度か渡した覚えがある。
まさか、それが社長だったとは驚きだ。
「---社長!私はいつも敬語も使わずに---し---し---失礼を---お---お---お許しください!」
私は大慌てで、社長にお詫びを伝えた。
近所のお爺さんだとばかり思って、いろいろ話もしてしまっていた。
実は好きな人の話もしていて、優斗さんの相談までしていたのだ…。
その様子を見て、優斗さんはクスクスと笑い始めた。
「芽衣らしいな…」
社長は少し悪戯な表情をした。
「君に相談された素敵な男性とは優斗だったのだな?私には勿体ないから諦めます~とか言っていたな!」
「社長!お願いです。言わないでください…」
社長は、横で項垂れている小早川さんに気が付き、優斗さんに言った。
「優斗、小早川さんを最後に送ってあげてくれ。」
「木下さん、優斗を少しお借りしますよ。」
社長は笑いながら、部屋から出て行ってしまった。
社長が、あのお爺さんだったとは、考えただけでも恥ずかしくなる。
優斗さんの名前は出していないが、いろいろ相談してしまったのだ。
社長は全て知っていることになる。
恥かしさで、頭を抱えたくなる。