イケメン御曹司の甘い魔法
会議室に着くと、九条社長は自ら椅子を引いて私を座らせると、自分はその隣に座った。
近くで見ると、悔しいほど整った綺麗な顔に圧倒される。
深いグレーの瞳は、見ると引き込まれてしまいそうだ。
「---木下さん、僕は藤堂がパートナーに選んだ君が、どんな女なのか興味があって近づいた。でも知れば知るほど君に興味が湧いてくる。」
九条社長は、私の腕を掴んで顔を近づける。
「---ち---近い---です!」
私は必死に遠ざけようと、体を押すがビクともしない。ピンチだ。
「----芽衣---」
いきなり後頭部に手を回されて、グイっと引き寄せられた。
「----い----や---」
言葉が途中で遮られる。
唇には柔らかい何かが触れる感触がした。
九条社長の唇だ。
さらに私の唇を開かせようと、キスが深くなる…
「や!や!止めてください!!」
やっとの思いで九条社長を突き放した。
初めてのキスを九条社長に奪われてしまった。
私は悔しくて涙が溢れて流れ落ちる。
「芽衣、キスくらいで泣くなよ!藤堂にいつも可愛がられているんだろ!」
私が大きく首を振ると、九条社長は少し慌てたようだ。
「芽衣、お前---まさか---キスは初めてじゃないだろ?」
私の様子を見て、九条社長は頭を抱えた。
「藤堂がそんなにお前を大切にしているのか?-------悪かったな-----」
九条社長は少し反省しているようではあるが、許すことはできない。
私は俯いたまま、顔を上げることはできなかった。
「なぁ芽衣、無理やりキスしたのは悪かった。謝るこの通りだ。」
九条社長はその場で立ち上がり、頭を下げた。
「芽衣、俺と藤堂は何が違うんだ?地位も金も持っている。どうすれば芽衣は俺に振り向いてくれるんだ?」
その言葉を聞いて、私は真っすぐ姿勢を正して九条社長に向かい合った。
「私は、お金や地位や見た目だけで、人を好きになったりは絶対しません。私が藤堂さんを好きなのは、そんなつまらない事ではありません。」
「じゃあ、藤堂の何が好きなんだ?」
「---------全部です。藤堂さんの話し方も、考え方も、思いやりも、藤堂さんだから全部好きなんです!!」