イケメン御曹司の甘い魔法


(…今日の夜、優斗さんと話をしてみよう…)

真理子の言っていた通り、逃げていても何の解決にもならない。
家に帰り、食事を済ませた私は、リビングに座り優斗さんの帰りを待っていた。
すると、優斗さんからメッセージが届く。

『今日は仕事で帰れそうにない。』

優斗さんは今までも仕事が忙しく、帰りが明け方になることもあった。
しかし、出張以外で帰らないことは初めてだった。

何か嫌な予感がする…
考えない様にしていても、目を閉じると一番思い出したくない場面が鮮明に浮かび上がる。
もちろん白崎さんと優斗さんのキスシーンだ。

眠れない私は、気持ちを落ち着かせるために、ハーブティーを飲もうとキッチンに向った。
何気なくカップを取ろうと思って食器棚に手を伸ばすと、お揃いのコーヒーカップが並んでいる。
優斗さんと私のコーヒーカップだ。
思えばこのコーヒーカップからいろいろな事が始まった。
カップを二つ並べてジッと見てしまう。
楽しかったことがいろいろと思い浮んでくる。

優斗さんのコーヒーカップを持ち上げようとしたその時、手が滑ってしまった。

“ガシャーン”

大きな音とともに、コーヒーカップが床に落ちた。
陶器でできたカップは見事に割れてしまった。
慌てて拾おうとした時、指に痛みが走り血が出てしまった。

まるで今の私のようだ。


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