イケメン御曹司の甘い魔法

マンションのパーティー当日

「優斗さん、何を着て行ったら良いのでしょうか?それにお土産のワインと生花は用意しましたが、他に必要なものはあるのでしょうか?」

「芽衣、そんなに考えなくても大丈夫だよ。芽衣は真面目だからなぁ」

奥様方が沢山いらっしゃるので、派手過ぎない服装を選んだ。
シンプルなブルーのワンピース。
アクセサリーは邪魔にならない、ブラブラと揺れないピアスを選んだ。
髪はカールさせて地味になりすぎないように一つに結んだ。
メイクアップは、以前圭太さんに教えて頂いた通りに優しい雰囲気にしてみた。
会社に行くより気を使う。
大変だ。



“ピンポーン”

本田さんの家のチャイムを鳴らした。
すると中から、真理さんの明るい声が聞こえて来た。

「はーい!どうぞ入って!」

私は優斗さんが入る後ろに続いて、本田さんの家にお邪魔した。

「こんにちは~お邪魔します。」

優斗さんが中の人に声を掛けた。
本田さんの家には既に、10名程の人が集まっていた。

「キャー初めまして!藤堂さんですよね?」

集まっていた女性たちは、一斉に優斗さんに向って黄色い声をあげた。

「藤堂さん、こちらに座ってください」

優斗さんは、その中の一人の女性に手を引かれた。
私が不安な表情をしていることに気が付いてくれたようだ。

「いや、僕は妻を一人に出来ないので、こちらで妻と一緒に居ます。」
「まぁ、奥様が羨ましいわ!藤堂さんはとても愛妻家なのね!」

どこかチクっと棘のある表情だ。
優斗さんに妻と呼ばれたことは、とても嬉しいが、なぜかこの場に居ずらい。

「藤堂さんは、独身だとばかり皆で噂していのですよ。いつご結婚されたのですか?」
女性たちは、私を試すように少し意地悪な笑顔で質問してきた。

いつと言われても、結婚していないのが事実だし、どう答えたら良いのだろう。
答えに困っている様子を優斗さんが気づいてくれた。

「私達は、今仕事が忙しいので入籍だけなんです。結婚式をまだしていないので、妻は結婚した実感が無いのだと思います。妻には申し訳ないと思っています。」


-------助かった。

優斗さんが、機転を利かせて助けてくれた。
仕事のできる人は、こういう時も機転が利くのだと感心してしまった。
しかし、そんなことを感心している場合では無かった。
ここにいる女性たちは、恐いほど感が良い。

「なんか気のせいかも知れないけど----藤堂さんと芽衣さんって夫婦の距離感じゃないですよね---遠慮があるというか、付き合いの浅い恋人みたいね---」


------大ピンチだ。

まわりの夫婦を見渡すと、何気なく腰に手をまわして座っている夫婦や、夫に寄りかるように座る女性も居た。
安心した夫婦の距離という事だろう。

「そう見えますか?妻はシャイなので人前でベタベタするのを嫌がるのですよ。僕はいつでもベタベタしたいのですけれどね。」

優斗さんは、そう言うといきなり私の腰に腕をまわすと、私を引き寄せるように寄りかからせた。

「芽衣、俺の飲んでるワインも味見してみるかい?」

優斗さんは何を言い出すのかと、驚いていると----
ワインを自分の口に含むと、私の後頭部を押さえて顔を近づけた。

------次の瞬間何が起こったのか一瞬わからなかった。

優斗さんは私に口づけをすると、自分のワインを私に注ぎこんだ。
口移しだ!
私は驚きのあまり、そのまま固まってしまった。
さらに、口の横にこぼれたワインを優斗さんは親指で拭うと、その指をペロッと舐めてしまった。

驚いて固まったのは、私だけでは無かった。
前で見ていた女性たちも、口を開けて固まっていた。
プルプルと震えて、顔が真っ赤になっている女性もいる。

その様子を見ていた真理さんはクスッと笑いながら近づいて来た。

「皆さんがご存じ無いだけで、藤堂ご夫妻はとても仲が良いのですよ。ねっ芽衣さん!」

真理さんは私の顔を見ると、パチリとウィンクして見せた。

「芽衣さん、みなさん、女性同士で美味しいケーキ食べませんか?知り合いに作ってもらったのですが、すごく美味しいのですよ…」


< 86 / 111 >

この作品をシェア

pagetop