イケメン御曹司の甘い魔法


萌絵さんは、突然表情を変えた。

そして、何か言いたそうな表情だ。

「萌絵さん?」

私が声を掛けると、萌絵さんは泣きそうな表情になりながら話し出した。

「こんな失礼なことは、言ってはいけないことは分かっています。でも----」
「萌絵さん、遠慮しないで大丈夫だよ。」

萌絵さんは涙を瞳にいっぱい貯めながら、話し始めた。
「私は、大学を卒業すると結婚が決まっているのです。親同士が決めた結婚なんです。」

私は萌絵さんの目を見ながら、大きく頷いて聞いていた。
この表情から、結婚したくないのだろうと直ぐに分かった。

「萌絵さん、他に好きな方がいらっしゃるの?」

萌絵さんは、いきなり私の両手を掴んだ。
驚いている私に、萌絵さんはさらに驚く話をしてきた。

「芽衣さん、一日だけ藤堂さんをお借りできませんか?」

「----------えっ-----どうゆう事ですか?」

思ってもいない申し出に、意味が分からず戸惑ってしまった。
優斗さんをお借りしたいとは、どういうことなのだろうか。

「芽衣さん、私はずっと前から藤堂さんが大好きだったんです。叶わぬ恋と分かっていました。でも、自分の結婚が決まってしまって、一度で良いので好きな人とデートしたかったんです。その思い出があれば、頑張って生きて行けそうです。」

萌絵さんの気持ちは痛いほどわかった。
好きでもない人の所に嫁ぐ前に、好きな人と思い出が欲しいという事だろう。
しかし、相手は優斗さんだ。
私も心に何か刺さっている様にズキズキする。
でも、萌絵さんの気持ちも叶えてあげたい…

「萌絵さん、優斗さんに話ししてみます。どうなるか分かりませんが、萌絵さんのお気持ちは良く分かりました。」

萌絵さんには、優斗さんに話しをしてみて返事をする約束をした。
そして、姉である真理さんには秘密にすると約束もすることにした。


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