イケメン御曹司の甘い魔法
帰国


仕事中に優斗さんが私のデスクへ来るのは珍しい。
よほど急用なのだろうか。

「木下さん、急ぎ伝えたいことがあるんだ、仕事の手が空き次第、副社長室に来てくれるかな?」

「はい。畏まりました。」

私は急いで仕事の一区切りをつけて、副社長室に急いだ。

“トントントン”

副社長室のドアをノックする。

「どうぞ、入って。」

私が副社長室の入ると、一人の女性が椅子に座っていた。
とても上品で優しそうな感じの女性だ。

その女性は、私を見ると目を細めて微笑んだ。

優斗さんはその女性を紹介する。

「芽衣、突然だけど、俺の母親なんだ。」

優斗さんのお母様だった。
確かに整った美しい顔と上品な雰囲気は優斗さんにそっくりだ。

私は、慌てて姿勢を正して挨拶をする。

「木下芽衣と申します。よろしくお願いいたします。」

すると、優斗さんのお母様は、突然立ち上がり私にハグをした。
香水の香りなのか、薔薇の花のような優しい香りがする。
あまりに突然のことで、私は固まってしまう。
どう対応したらよいのか分からない。

「貴女が芽衣さんね、お会いしたかったわ。」

優斗さんは、呆れたような顔をして、私からお母様を引き離した。

「母さん、芽衣が困っているだろう。必要以上のスキンシップは止めてくれ。」

お母さんはニコリと笑った後に、少し拗ねたように口を尖らせた。

「だって芽衣さんがとても可愛いから、抱き締めたくなっちゃうのよ。」

優斗さんのお母様は、仕事で日本に一時帰国したらしい。
私のことは、優斗さんが伝えてくれていたようだ。

お母様の仕事は、ウェディングドレスなどのオートクチュールをデザインする仕事だった。
ここ数年、繊細な雰囲気のドレスが話題になり、かなり人気が出て来たそうだ。
そんなに人気になっているとは、優斗さんも知らなかったようだ。

今回は日本でコレクションが急に決まり、急ぎで日本に帰ってきた。

そして日本に帰って来た理由はもう一つあった。




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