【溺愛結婚】懐妊後、御曹司から猛烈に溺愛されています。〈完結〉
慣れない手つきでネクタイを結ぶわたしを見て、藍はちょっと笑っていた。
「ちょっと、何で笑うのよ……」
なにも笑うことないじゃない……。ひどい、藍ったら……。
「悪い悪い。一生懸命ネクタイを結ぶ透子が可愛くて、つい笑ってしまった」
「え、何それ……。何も笑うことないじゃない……」
わたしにだって人間だから、不器用なことくらいあるもの。
「だって可愛くてさ、透子が」
「だから、いちいち可愛いって言わないでってば……」
いつも可愛いって言うんだから……。やめてって言ってるのに。
「可愛いのは事実なんだから、仕方ないだろ?」
「……もう、藍のバカ」
そうやっていつも、わたしを困らせるようなことを藍は言う。
その度にわたしは、なんて返したらいいのか分からなくなる。
「透子が可愛いのが悪い。 この責任どうとってくれる訳?」
「え、どうって……?」
何言ってるのか、分からないんだけど……。
「そうだな……。透子からキスしてくれたら、嬉しいかな」
「はぁ……?」
え、わたしからキス……!? そんなのムリなんですけど……!