【溺愛結婚】懐妊後、御曹司から猛烈に溺愛されています。〈完結〉
「え?……何だよ、急に」
藍の表情が少しだけ曇ったのを、わたしは見逃さなかった。
「……わたし、知ってるんだよ。高城社長がわたしのこと、毛嫌いしてたってこと」
わたしは元々関東の田舎の出身の人間だ。京都に来たのも若女将として働くためだけだ。
関東の田舎の出身のわたしは、京都弁なんて話すことも出来ない。だから今までも、お客様に対しても標準語で話すことも多かった。
少しだけ京都弁も話せるけど、わたしには合わない。イントネーションも分かりにくいし、言いにくいし。
「関東の田舎の出身のくせに、京都で若女将をやってるなんて、信じられないって……。バカにしてたこともね」
「……知ってたのか」
「知ってたよ。……結論から言えば、わたしは高城家の嫁としては、元々相応しくないってことも分かってるよ」
高城家を継ぐ者としては、本当ならどっかの令嬢と結婚した方が藍のためにもいいのかもと、まだ思ってる。
けどわたしは、それでも藍と結婚して夫婦になることを決めた。藍と夫婦になるために、そして藍と家族になるために……。
それが最善の選択だと思ったからだ。