【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
初めまして、幽霊さん。
夏を制するものは受験を制する。
この言葉を耳にタコができそうなくらいに浴びた私は、現実逃避がてら学校の美術室へ足を運んでいた。
もちろん授業がないこの夏休みの時期に教室の鍵が開いてるはずもなく、わざわざ職員室に行って鍵をもらってきたのだ。「美術室に忘れ物をした」と嘘までついて。
美術部顧問の藤村先生(フルネームは藤村朔太郎、通称フジサク先生である)はあからさまに面倒だと顔に出ていたが、案外あっさり貸してくれた。
「現実逃避もいいけど、ちゃんと勉強もしなよ」とお小言まで貰ってしまったけれど。
夏休みとは言っても今日も教室には受験を控えた勉強中の同級生が大勢いる。
しかし美術室はクラスの教室がある校舎とはまた別の建物にあり、案の定この棟には他の生徒は誰1人いなかった。
聞こえてくるのもグラウンドで号令走をしている野球部の掛け声ぐらいで、それをBGMにして美術室の窓から見える校庭の向日葵を眺めてみる。
太陽の様に堂々と咲いている向日葵は現実から逃げている私よりも立派に今を生きているではないか、なんて珍しくポエマーチックになってしまうくらいには疲れていた。
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