【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
小学校の頃に夏休みの宿題で描いた絵が入賞して、以外と得意なのかもしれないと思って中学校で美術部に入部した。
そんな曖昧な理由で入った部活だったが、美術は小手先では語れないほどの奥深さや難しさがあって小学校の時のように簡単にはいかなかった。
頭の中ではイメージが出来ているのに、いざ筆をとると途端に手が動かなくなる。自信満々で仕上げた作品に限って評価されずに真っ白に塗り替えられる。
どうして、どうして。そう思い悩む日々が辛くなって、高校では美術部はやめよう。そう固く決心したはずなのに、私は結局美術部に入部した。
理由は簡単。人が描いているのを見たら、描きたくなったから。
「先生になろうって思っていた時期もあったんですけどね」
そして去年に配られた進路調査希望。自己分析を行う授業の中で私は自分なりに考えてみた。今の私が他の生徒よりも秀でていること。それは人よりも絵が描ける。それだけしか思い浮かばなかった。
その延長線上で当時の私が出した答え。それは美大に進学することだった。
「へぇ!いいじゃない!」
でもそんな軽い理由で、狭き門である美術の先生になれるわけない。美大に行けばもっと才能がある人ばかり。進学したところで埋もれるだけ。それに自分が絵を教えるなんて、そんな想像が一切思い浮かんでこなかった。
夢を追うよりも諦めた方が先であり、その方が楽だった。
「でも辞めました。自分には無理だと思いました」
それに、とある人から言われたことを今でも覚えている。