【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
「一度、顧問の先生にそう言って見たんですけど・・・やめろと言われてしまって」
3年生になってそう日が経っていない頃だったか。
2度目の進路希望調査を渡され本格的に将来の選択を迫られた私はそのまま藤村先生のものへ行ったのだ。美術の教職が取れる学部への進学についてどう思うか、すこしアドバイスをもらおうと思っての行動だった。
しかしアドバイス以前に「もっと他にやりたいことないの?」と曖昧に返されてしまい、そのまま白紙で提出することになって結局は担任の先生に怒られてしまった。
他に特にやりたいことを見つけられない私はふらふらと今日も志望校も決まらずに過ごして入る。
「私は千尋ちゃんにぴったりだと思うけどなぁ」
「夢を応援するのが先生じゃないの?!」と代わりに頬を膨らませて怒ってくれた彼女に私は礼を述べた。
きっと宏海さんも今の私と同じくらいの歳に「美術の先生になりたい」と夢を持ったのだろう。いっぱい先生や家族、友人に相談をしていたのだろう。
美大に進学するために勉強して、卒業後は絵を教える立場になる未来へ期待を膨らませて。
「そう言ってくれるだけで十分ですよ」
───目を輝かせて当時の夢を話す彼女は、夢を叶えるどころか追うこともできずに亡くなってしまったのだ。
そう思った時、“可哀想”だと、そう思ってしまった私は宏海さんと目を合わせることが出来なかった。