【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。


「ねぇ、千尋ちゃん」
「はい・・・、」

 名を呼ばれて返事をしようと顔を上げた時。

「あれ、」

 私は声が詰まる。

 目を見開かせて固まった私に彼女は心配そうに寄ってくる。

「どうしたの?そんな驚い顔をして」

 彼女、宏海さんを───どこかで見たことがあるような気がする。

 向日葵を背景に宏海さんと目が合った瞬間、何かが引っかかった。

 初対面だから知っているはずないのに、どこか見覚えがあるのは何故だろうか。早く思い出せと何かが訴えかけてくるような、そんな衝撃が身体中を巡る。

「い、え・・・なんでもないです」

「そう?」と面白そうに笑う目の前の彼女はやっぱり綺麗な人だ。

 しかし、どんどんその笑顔も陰りを帯びてくる。諦めてしまったような、そんな表情をしていた。

 もう時間が無いのに。心は焦るばかりで何1つ分からないままタイムリミットが近づいてくる。


「次の場所に行ってみませんか?何か思い出すかもしれません」


 このまま私は何も出来ずに宏海さんと別れることになるのだろうか。心臓が絞られるような痛みが襲ってくる。辛いのは彼女の方なのに。


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