【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
───結局手がかりは見つからないまま美術室に戻ってきてしまった。
西日が差し込む美術室には若干不穏な空気が漂っている。
「もう諦めちゃおうかしら。思い出したってその人に会えるわけでもないんだから」
「そんな・・・!他に、何か・・・」
ないですか?その言葉は力なく吐き出される。
彼女が消えてしまうまで、残り15分。私は必死に頭を働かせたいのに上手く出来ない。絵が描きたいのに描けない。その時の気持ちとよく似ていた。
この短時間で何が出来るのだろうか?最期のお願いを叶えられないまま彼女は消えてしまうのか?思いを寄せていた相手の顔も名前も分からずに?
本当に、本当に、こんな終わり方でいいのか?そんな最期があっていいのだろうか?
彼女は藁にも縋る思いで私の目の前に現れたのではないか?最期の砦として、決死の思いで声を掛けたのではないか?
「まだ、時間はあります。だから、」
「ありがとう。千尋ちゃん」
日が当たる窓際で向日葵を上から見つめている彼女にどう声を掛けたらいいのか分からない。私の気持ちが伝わっているかのように、宏海さんは眉を下げて笑う。
「・・・その人のこと、本当に大切だったんですね」
「そうね」と返ってきた声は、やっぱり悲し気だった。