【完】真夏の校舎で出会ったのは幽霊でした。
高校3年生になった途端。両親や親戚から「行きたい大学はないのか?」「勉強だけはちゃんとしなさい」「後悔しない様に自分で決めろ」と毎日の様に言われるようになった。「自分でちゃんと将来を考えなさい」と、そう言われ続けても17歳の私には未来自分がどうなっているかなんて想像できない。
やりたいことを探すために大学に行くのではないか、そう思っていたが「そんなふらふらするために大学は行くものじゃない」と論破されそうで口には出さなかった。
正直、今にも大人からの圧に押し潰されそうなのだ。
それを担任の先生に愚痴をこぼしていると「期待されているんだよ」と言われた。きっと向こうは元気づけようとしてくれているのだが、素直に“期待”を受け入れる器が今の私にはない。キャパシティーオーバー状態である。
それで自分で進んだ道が間違っていたとしても、ああしないから、こうしないから、と言われることになるのだ、きっと。
吐き出す様に出た溜め息によってしばらく掃除されていない美術室の埃が舞い上がったーーーその時だった。
「私は小坂宏海といいます。昔この学校に通ってて・・・あ、卒業する前に死んじゃったんですけどね」
話しかけられたのだ。
足がなくて身体が透けている女性から。